『テレワーク廃止』に待った!テレワークの有無で採用スピードに2倍の差?!
「社員にテレワークを認めている会社は、完全出社を義務付けている会社に比べて、2倍の速さで人を採用をしている」という記事が、アメリカの経済誌『フォーブス』に掲載されていました。
今回はこの記事を元に、テレワーク制度の有無が、企業の採用活動にどのような影響を与えるのか、その可能性についてご紹介したいと思います。
大量退職時代(Great Resignation)
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、アメリカでは2021年の初め頃に、多くの人が自主退職をする「大量退職時代(Great Resignation)」を迎えました。それ以降、この記事を執筆している2023年8月時点に至るまで、アメリカ国内の多くの職場で人手不足が続いています。
大量退職時代のいま、アメリカの企業は、必要な人材をいかに採用するか、また社員の退職をどのように防ぐかについて頭を悩めています。
このような現在のアメリカの労働市場を考ると、テレワーク勤務の有無によって採用のスピードに2倍の差が出るというこのフォーブス誌の記事は、多くの人の関心を集めています。
テレワークの有無で採用スピードに2倍の差
さてここからは、フォーブス誌の記事で紹介されている企業の「社員数の増減」を分析した調査結果を見ていきましょう。
社員数の増加率は、完全出社勤務の会社に対して、テレワークと出社を組み合わせたハイブリッド勤務の会社では約2倍、フルリモート勤務を認めている会社では約2.5倍になります。
では、分析の対象期間を12か月に広げてみるとどうでしょうか?
完全出社勤務の会社に対して、ハイブリッド勤務の会社では約1.5倍、フルリモート勤務を認めている会社では2倍以上になり、対象期間を変えても同様の差が出ていることが分かります。
この調査結果について、急成長しているテック系スタートアップ企業が活発に採用活動を行っているという事実が、結果に大きく影響しているのではないかという見方がありました。テック系スタートアップの多くは、社員に対してフルリモート勤務を認めていたり、出社は最低限で良いというテレワーポリシーを持っているためです。
この疑念について確認するために、企業規模別に分析された結果を見てみるとどうでしょうか。
結果は、小規模なスタートアップから社員数が5,000人を超えるような大企業まで、すべての企業規模ごとのグループで、同様の傾向が見られました。つまり、企業規模にかかわらず、完全出社の会社は、より柔軟な働き方を認める(テレワークができる)会社に対して、社員数の増加の観点で遅れをとっていることが分かったのです。
また試しに、ここ最近リストラなどの人員整理を活発に行っていたり、テレワークと相性の良い職種が多いテック企業を調査対象から除してみても、社員数の増減におけるこの傾向は変わりませんでした。
テスラCEOのイーロン・マスクを始め、アフターコロナへの移行により、テレワークを廃止して社員へ出社を求める企業が増えていますが、今回の調査結果を考えると、採用競争力強化を目的に、今後改めて働き方の自由を見直す企業が出てくるかもしれません。
日本の採用市場におけるテレワーク
では、日本の採用市場においては、テレワークの有無は企業の採用にどのような影響がありそうでしょうか?
少し前の話になりますが、2022年にヤフー株式会社が、全ての社員が国内のどこにでも自由に居住でき、通勤手段に飛行機も認める制度を導入した結果、中途採用の応募者数が制度導入前と比べて6割増えたという事例があります。ヤフーのこの事例において特に顕著な点は、一都三県以外の地域(これまではヤフーで働くことが難しかった地域)から応募する人が増えたという点です。居住地にかかわらず働くことができるテレワークの活用が、優秀な人材を確保する助けになることを示していると言えます。
新卒採用についても見てみましょう。株式会社学情が2023年4月に入社した新社会人440人に対し、入社前に当たる2022年11月~12月にインターネットで行ったアンケートによると、入社後の働き方の希望は、約56%の新社会人が出社を選んでいます。出社を希望する理由としては、下記のような内容が挙げられています。
・職場の雰囲気に慣れたい
・上司や先輩社員の顔と名前を覚えてもらいたい
・業務の進め方を学びたい
一方で、同じ調査の中では、 入社する企業に「テレワーク」の制度があったら「利用したい」かの問いに対し、約75%の新社会人が利用したいと答えており、希望するテレワークの頻度は、週に1~2日が37.3%と最も多くなっています。
まとめ
労働力人口が減り採用競争が激しくなっている日本で、採用応募者の母集団形成は、企業の経営課題の一つです。コロナ渦で導入したテレワークを廃止しようとお考えの企業もあると思いますが、テレワークを優秀な人材の採用と離脱防止のために活かすという考え方もあると思います。ぜひ今回ご紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。