企業誘致成功のために、自治体が知っておくべき「企業の本音」
みなさん、こんにちは。地方創生のエキスパート、イマクリエ代表取締役の鈴木です。
Amazon売上ランキングでベストセラー第1位を獲得した私の著書『日本一わかりやすい地方創生の教科書』に取り上げたテーマを分かりやすく解説する記事をシリーズでお届けします。
前回の記事では、新しい企業誘致のカタチとして、昨今、全国にサテライトオフィスが増えているという話をしました。
今回の記事では、その続編として、サテライトオフィスを活用した地方進出における「企業の隠れた本音」についてお話します。
企業の隠れた本音
サテライトオフィスを活用した地方進出が増えてきた背景として私は、「隠れた企業の本音」があると考えています。それは、ズバリ!「優秀な人材の確保」です。
サテライトオフィス進出で人材確保!?
最近では、首都圏ではどの業界でも人手不足の状態ですので、「地方に進出して、埋もれている人材を発掘して採用したい」という企業が少なくありません。その地方に、首都圏と同じレベルのスキルを持った人材が集まるのかどうかを試すことを、サテライトオフィス進出の条件にしている企業もあります。「マネージャークラスが採用できたら進出します」などと具体的な条件を語る企業もあるほどです。
ある自治体が企画した「進出検討企業の現地視察ツアー」では、その地方への進出にとても前向きでこのツアーに参加した企業が、視察後に進出のモチベーションを下げてしまったというケースがありました。その理由は、地域で「欲しい人材を獲得するのが難しい」と分かったことでした。現地の人材派遣会社とのやり取りで、「そんな人材をこのエリアで求められても無理です」と断られたことで進出の熱意が冷めてしまったというのです。
それほど、サテライトオフィスを使っての企業誘致には「人材確保」が大きな課題となっているのです。
サテライトオフィスからの企業の撤退
ここで一つ、こちらの図を見てください。
全国にサテライトオフィスが増えている反面、数年間で撤退する企業の数も右肩上がりです。
これまでの企業誘致は、第二次産業の大きな工場を誘致することがメインでした。そのためには、誘致する自治体の準備も大変です。工場用地を取得、造成して工場が建設できる環境を整えたうえで国や県の力を借りながら、大企業と交渉しなければなりませんでした。企業の側から見ても、工場の建設は大規模な投資になりますから、慎重に進出の可否を決めます。
一度進出したら、最低でも10年単位で工場を稼働させなければなりません。工場の稼働後、数年で撤退するというわけにはいかないからです。
ところがサテライトオフィスを使っての進出には、コストがそれほどかからないため、そのような制約はありません。地方進出しやすいが、撤退も早い。それがサテライトオフィスの実態です。
なぜ撤退するのか?
では、なぜ撤退が早いのか?
それは、進出した地方には、思った以上に事業を継続するための課題が多いからです。総務省が調べたデータによると、地方に進出した企業が抱える課題とは、次のようなものが挙げられます。
地元のデジタル人材の不足
進出後の企業への支援不足
地元企業などとのビジネスマッチングの機会不足
やはり人材不足は課題の最上位に来ていて、進出企業の大きな課題となっていることが分かります。自治体は、企業がサテライトオフィスで地域に進出してきたらそれで終わりではなく、それ以降も、デジタル人材を中心とした地元人材の確保と育成支援など、継続して進出企業に対して細かな対応や支援を行うことが求められています。
まとめ
今回は、最新の企業誘致トレンド「サテライトオフィス」の続編として、地方のサテライトオフィスに進出する企業の本音をお話しました。
この記事を通じて、地方創生に興味を持っていただけた方には、東洋経済新報社から発売した私の著書『日本一わかりやすい地方創生の教科書』を手に取っていただきたいと思います。
「発想の転換」で、「地方」こそ劇的に変わる!問題解決のヒントになる先行事例を多数紹介していますので地方創生に関わる方、地方創生に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
今後も皆さんが地方創生について学び、実践できるような情報をお届けしていきます。次回の記事をお楽しみに!