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ロシアのウクライナ侵攻がもたらすヨーロッパのテレワーク危機!?

※本記事は2022年9月に執筆し、株式会社イマクリエの会社ホームページに掲載していた記事をnoteに移管しています。

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、半年以上が経過した現在も、依然として終わりの兆しが見えてきません。一刻も早い終息を願うばかりですが、ウクライナ侵攻がこの冬、ヨーロッパ諸国の人々のテレワーク勤務に大きな影響を与えるかもしれない事態になっていることをご存じでしょうか?


ヨーロッパ諸国が迎える寒く辛い冬

最近、ヨーロッパでガスの価格が急騰したという「エネルギー危機」に関するニュースをご覧になった方も多いと思います。
このガス価格急騰の背景には、ウクライナへ侵攻したロシアに対し経済制裁を実施したヨーロッパへの報復として、ロシアが今月、主要なガスパイプライン「ノルド・ストリーム1」を通じたヨーロッパへの天然ガス供給を無期限停止すると発表したことがあります。

ヨーロッパではエネルギー需要の25%はガスでまかなわれていて、そのガスの約40%はロシアから供給されています。エネルギー危機は単なる価格高騰にとどまらず、ヨーロッパ諸国において、そもそも今年、冬を越せるのかという市民の日々の生活に直結する切実な問題なのです。

たとえばイギリスでは、ガス価格の高騰を受け、最近まで一般家庭の光熱費が80%値上がりすると言われていました。金額にしてこれまで月額164ポンド(約27,000円)だった光熱費が、295ポンド(約49,000円)になるというのです。

イギリス国民から不安と不満の声が上がる中、今月8日にはトラス首相が「2022年10月1日から2年間にわたり、イギリスの一般家庭が支払う光熱費(電気・ガス料金)の年間上限金額を2,500ポンド(約414,000円)に据え置く」ことを発表しました。月額にすると208ポンド(約34,500円)です。

これで一安心と言いたいところですが、ロシアのウクライナ侵攻が始まる前の昨年10月時点での一般家庭の光熱費と比較すると、これでもなお、かなりの値上げとなっていて、光熱費が一般家庭の家計を圧迫することは明白です。この冬、政府による財政的支援がなければ、イギリスの全世帯の42%にあたる12万世帯が適切に暖房出来ない状態、いわゆる「燃料の貧困」に陥ると言われています。

家庭の光熱費を削るためのオフィス回帰

この冬、家庭の光熱費を削るために、コロナ禍で2年に渡り行ってきたテレワークをやめてオフィスへ出社することを考えている人たちが増えています。

現在、イギリスでは労働者の24%が、テレワークを基本として時々オフィスに出社するハイブリッド型のワークスタイルで働いています。

イギリスはヨーロッパの中で最も通勤時間が長い国の一つ。電車など公共交通機関の運賃の値上がりは物価のインフレーションを上回り、非常に高額なため、彼らにとってテレワークをするモチベーションの一つは、なんといっても通勤にかかる出費の削減でした。

ですが、もし自宅で働くために必要な光熱費が、通勤にかかる費用を上回るならば、テレワークを続けずに、出社を選ぶ人が増えることになるだろうと言われています。

テレワークは、富裕層だけが享受できるもの?

経済的に余裕があり、断熱性の高い(夏には外の暑い空気を入れず、冬には中の暖かい空気を逃さない)家に住んでいる人たちは暖房費を節約できるため、エネルギー危機の中にあっても引き続きハイブリッド型のワークスタイルのメリットを享受し続けることが予想される一方、断熱性の低い家や手入れのされていない賃貸住宅などに住んでいる低所得層は、この冬、自宅の光熱費を下げるためにテレワークをやめて、オフィスに出社することを選ぶかもしれません。

調査によるとイギリスは、世界の中でテレワークで個人の労働生産性が上がっている国の一つであり、イギリスの企業もテレワークの持つ意義を十分に認識しています。

新型コロナウイルスの流行で、多くの犠牲を払った私たち人類にとって、唯一獲得した財産は、「テレワークによる新しい柔軟な働き方」と言っても過言ではありません。いま新たに立ちはだかったエネルギー危機を前に、テレワークをそう簡単に、やすやすと諦めてしまってよいのか。考えさせられる時が来たようです。

https://www.imacrea.co.jp/corporate/tw_diagnosis/

出典