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【海外事例紹介】テレワーク×地方創生 ヨーロッパ編~デジタルノマドビザで外国人テレワーカーを誘致~

※本記事は2023年5月に執筆し、株式会社イマクリエの会社ホームページに掲載していた記事をnoteに移管しています。


「ノマド」とは、14〜16世紀頃の中世フランス語「nomade」を語源とする言葉で、定住と移動を繰り返しながら放牧を行って生活する「遊牧民」を意味します。
ノマドという言葉が持つ「移動しながら生活する」というイメージから派生して、特定のオフィスを持たずに、都度自分の好きな場所で働く人をノマドワーカーと呼びます。近年では、特にITC技術を活用し、場所に縛られずに働く人たちを意味する「デジタルノマド」が注目されており、彼らに対して特別な滞在・就労許可(ビザ)を発給することで、デジタルノマドを誘致する国が増えてきています。

今回の記事では、デジタルノマドビザを活用して、海外から国際的なテレワーカーを誘致することで、地方の活性化に取り組んでいるヨーロッパの国々の事例をご紹介します。

なぜデジタルノマドが注目されているのか?

コロナ禍では、世界中で観光客が激減しましたが、一方で、場所に縛られずに働くことができるテレワークは世界中に広まりました。多くの国が、コロナウイルスが残した唯一のプラスの遺産であるテレワークを活用し、大打撃を受けた観光業界を復活させたいと考えるようになったという背景があります。

デジタルノマドは、滞在国以外の国の仕事をテレワークで行うため、現地の人から雇用を奪うことなく、地域経済に外貨をもたらしてくれるというメリットがあります。また、住民が増えることは、地元の商店やレストランなどの利用者が増えることを意味し、地域に新たな雇用が生まれることにもつながります。

安定した収入のあるテレワーカーを誘致することで、これまでの観光客誘致以上の利益を得ようと、各国が競い合ってデジタルノマドの呼び込みに取り組んでいます。

ヨーロッパ諸国のデジタルノマド・ビザプログラムの導入状況

旅行先としても人気の高いヨーロッパですが、海外からデジタルノマドを誘致するためのビザプログラムを展開している国が多くあります。

ヨーロッパ諸国のデジタルノマド・ビザプログラムの多くは、現地の仕事ではなく、欧州連合(EU)外の国の仕事をテレワークで行うことができる人を対象に発行するものが主流です。

応募にあたって必要な要件は比較的シンプルで、デジタルノマドビザで滞在中に、テレワークでできる仕事を持っていること、毎月一定の収入額があることの証明、滞在国の医療機関で使える旅行保険に加入していることなどです。

■ ポルトガル:アメリカ人に大人気

ポルトガルは2022年10月にデジタルノマド・ビザプログラムをスタートした後、わずか2か月半で200件以上のビザを発行しました。特にアメリカ、ブラジル、イギリスからの応募者が多いと言います。

アメリカ人のデジタルノマドは約1,700万人いると言われていますが、そのうちの約3分の2に当たる1,120万人は、フリーランスや起業家ではなく、一般の企業や組織で働く従業員です。2022年を見てみると、アメリカ人のデジタルノマドに最も人気のあった国はポルトガルで、特に首都のリスボンが人気でした。

リスボンの街並み

リスボンがデジタルノマドに人気の理由は、美しい海岸、気候の良さ、他のヨーロッパの国へのアクセス(旅行の利便性)の良さ、ハイスピードインターネットやWi-Fiアクセスの良さ、充実したコワーキングスペース、そして物価の安さです。

一般的に、世界の中でも給与水準が高いアメリカ人のデジタルノマドは、これまでと同じ仕事をリモートで続けたまま、アメリカと比べて家賃や物価が圧倒的に安いポルトガルで生活するため、給与は変わらずに購買力が上がり、旅行などにより多くのお金を使うことができます。これは、デジタルノマドを誘致するのに重要な要素の一つと言えます。

ポルトガルでは、リスボンのような都市部だけでなく、デジタルノマドを呼び込み、地域の活性化に取り組んでいる自治体が多くあります。例えば、アフリカの北西沖に浮かぶポルトガルの自治領、マデイラ諸島は「ノマド村(Nomad Village )」プロジェクトでデジタルノマドの誘致活動を行っています。具体的には、無料のコワーキングスペースの提供、宿泊先の紹介、デジタルノマドの交流のためのイベント企画・運営等を行っており、プロジェクトを開始した2021年2月からの最初の1年間で、15,000人以上のデジタルノマドが訪れており、その経済効果は3,000万ユーロ(約44億4千万円)に上ると言われています。

■スペイン:2023年、待望のデジタルノマドビザがスタート

旅行先として世界中から人気のスペインも2023年2月からデジタルノマド・ビザプログラムをスタートしました。プログラムの開始前から注目度は非常に高く、2023年1月には、「スペイン デジタルノマドビザ」のGoogleでの検索件数が66%も増えました。

スペインの魅力は、温暖な気候や食文化に加えて、物価の安さがあります。スペインの平均的な生活費は、イギリスと比べて約20%ほど安く、これは西欧諸国の中でも顕著です。さらに、デジタルノマドビザには税制上の優遇措置があり、例えば、年収が60万ユーロ(約8,800万円)までの人は、所得税率が通常の24%から15%に抑えられています。

スペイン

スペインがデジタルノマド・ビザプログラムを導入した背景として、起業家やスタートアップを呼び込み、特にテック業界を盛り上げたいという狙いがあります。

また、スペインには人口減少や過疎化の問題を抱えた自治体が多くあり、このような自治体がデジタルノマドを誘致して、地域を活性化させるための取り組みとして、「Red Nacional de Pueblos Acogedores」というオンラインのプラットフォームが存在します。

このプラットフォームには、人口が5,000人以下の町がすでに約30自治体参加しており、それぞれの自治体がデジタルノマド向けに、町の歴史、宿泊先の情報、インターネット回線の速度、コワーキングスペースの情報、その町での平均的な生活費、アクティビティなどの情報を提供しています。

試しに、このプラットフォームを使って、スペイン南部にあるアンダルシア地方の町、ヘナルグアシルの情報を見てみると、人口が500人にも満たない小さな田舎の町ですが、無料で利用可能なコワーキングスペースがあり、ローカルアーティストによるアート作品を楽しむことができることが分かります。現地情報は、プラットフォーム上で文章、写真、ビデオを使って提供されており、デジタルノマドに町を知ってもらい、誘致するための重要な役割を担っています。

まとめ

日本は、現状デジタルノマド向けのビザの発給は行っていませんが、今回ご紹介した国の先行事例から学べることは多くあるように思います。

アフターコロナで日本を旅行で訪れる外国人観光客が増えていますが、今後、単なる旅行先としてだけでなく、デジタルノマドとして日本の地方の町が選ばれるようになるには、何が必要なのかを考えてみるきっかけになりそうです。

https://www.imacrea.co.jp/corporate/tw_diagnosis/

出典