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【アメリカ】リモートワークトレンド最前線(2023年)

※本記事は2023年5月に執筆し、株式会社イマクリエの会社ホームページに掲載していた記事をnoteに移管しています。

昨年2022年の夏、アメリカでは、イーロン・マスクCEOがテスラの社員に対して事実上の「テレワーク禁止令」を出すなど、新型コロナウイルスの脅威の終息と共に、従業員をオフィスに呼び戻すオフィス回帰の動きが始まりました。

2023年現在では、アメリカにおけるテレワークはどのような状況にあるのでしょうか?今回は、アメリカのテレワークにまつわる最新のトレンド情報をお届けします。


企業のオフィス回帰は2023年も続いている

コロナウイルスの感染拡大が落ち着いた2022年前半から、アメリカではフルリモートワークをやめて、社員を会社に呼び戻す動きが続いていました。

この動きは2023年に入ってからも変わらず続いており、これまでは社員にフルリモート勤務を認めていたアマゾン、ディズニー、スターバックスなどの企業においても、春以降続けざまに、社員に対して出社を求める決定をしたことが報じられました。週5日の出社を求める企業もありますが、多くの場合は、週に2日〜4日の出社を求めるハイブリッド勤務への移行です。

2023年にフルリモート勤務を止めた米国大手企業の例

リモートワークOKの求人動向は?

アメリカの労働市場は、コロナウイルスからの回復期に当たる2021年はじめ頃から、自主的に仕事を辞める人が急激に増えた「大量退職時代(Great Resignation)」に入っていました。

多くの人が自主退職を選んだのには様々な背景があるのですが、コロナ禍で社会や生活、そして人々の働き方に対する価値観が大きく変わり、より柔軟な働き方ができる環境を求めて転職をした人が多かったというのが大きな理由の一つと言われています。また、コロナウイルスの脅威が落ち着くに伴い、経済活動が一気に再開したことで求人が溢れていたため、人々が安心して退職し、転職活動を行うことができたということもあります。

就職売り手市場の大量退職時代において、企業は優秀な人材にとって魅力のある求人を実現させるために、また、既存の社員を自社にとどめておくために、リモートワークを含む福利厚生をより充実した内容にすることに力を入れていました。大量退職時代は「リモートワークができない会社は求職者から選ばれない」時代であったとも言えます。

ところが、2022年の後半頃からは、アメリカ経済における景気後退が懸念されるようになり、GAFAなどの巨大テック企業を中心に一気にレイ・オフ(一時解雇)が進み、直近2023年1月~3月の3か月間で27万人以上の人員削減が行われました。

これに伴い労働市場の冷え込みも懸念されはじめ、売り手市場から買い手市場に移行する可能性が見え始めたことにより、企業はリモートワークを餌に求職者を募る必要がなくなってきました。またこれは、既存の社員にとっても「リモートワークができないのであれば退職する」と容易く言える時代が終わりつつあることを意味します。

実際に、2022年11月にリンクトイン(LinkedIn)に掲載されたアメリカ国内の求人を見てみると、フルリモートワークのポジションは求人全体のわずか13.2%で、最も多かった2020年3月の20.6%と比較するとかなり減ったことが分かります。この傾向は、インディード(Indeed)やジップリクルーター(ZipRecruiter)など、その他のアメリカの主要求人サイトを見ても同様です。

求職者側に目を向けてみると、どうでしょうか?
現状は、いまでも多くの求職者がフルリモートの仕事を希望しており、リンクトイン上で実際に求職者が応募した求人のうち、52.8%はフルリモートのポジションでした。週5日出社の求人ならば「選考を受けない」、「オファーを受けない」という求職者もまだまだ多いようです。

データはリモートワークの復活を示している?

ここまでの話からは、アメリカでフルリモート勤務ができる時代は終わりを迎えたように見えるのですが、フルリモートが復活してきている兆しを示すデータもあり、注目を集めています。

例えば、リンクトイン市場調査(Linkedin Market Research)では、2023年1月には調査対象の労働者のうちの50%が出社勤務、28%がフルリモート勤務を行っており、2022年11月の55%出社勤務、25%フルリモート勤務と比較すると、またフルリモート勤務の人が増えてきていることを示しています。

データが示すフルリモート勤務の予想外の跳ね返りが、新しいリモートワーク時代の始まりを示す兆しなのか、あるいはあくまでも一時的な動きでしかないのかについては、実に様々な意見があり、結論を急ぐことはできません。
一方、ハイブリッド勤務を見てみると、2021年10月以降は非常に緩やかにではありますが増加を続けており、この傾向は今後も続くのではないかと見込まれています。

また、テレワークに関する研究の第一人者であるスタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授が行った最新の調査(*5)では、アトランタ、ボストン、シカゴ、ニューヨークといったアメリカの主要大都市では、最近、フルリモートとハイブリッドを合わせた「リモートOK」の求人数が、過去3年間で最高数を記録したというのです。このようなリモートOKの求人は、フロリダなどのアメリカ南部の地域ではほとんどなく、ハイブリッド勤務も含めたリモートワークは、政府機関や教育機関、テック企業などのホワイトカラーの職種が多い大都市を中心に行われていることを示しています。

まとめ

アメリカでは2023年も引き続き、リモートワークやハイブリッドワークを巡る、経営者と労働者の間の駆け引きが続いていきそうです。

その間にも、リモートワーク時の業務効率を上げたり、コミュニケーションを円滑にしたり、イノベーションを起こすのに役立つような新たな技術やツールの開発が行われていくだろうという期待感が人々の中にあり、これはアメリカならではの価値観と言えます。

イマクリエでは、今後も引き続き、アメリカにおけるリモートワークの最新トレンドにまつわる情報収集と発信を行っていきます。
どうぞご期待ください。

https://www.imacrea.co.jp/corporate/tw_diagnosis/

出典