\経営者・人事部必見/アフターコロナに選ぶべき働き方は、ハイブリッド勤務だ!
※本記事は2022年9月に執筆し、株式会社イマクリエの会社ホームページに掲載していた記事をnoteに移管しています。
テレワークは出社勤務よりも生産性が低い?
従来の出社型オフィスワークとテレワークとを組み合わせた働き方「ハイブリッドワーク」。週に数日は出社してオフィスで働き、残りの日は在宅あるいはシェアオフィスやコワーキングスペースなどでテレワークする働き方で、世界中で急速に広がりを見せています。
しかしながら、テレワークに懐疑的な考えを持っている経営者がいるのも事実で、アフターコロナを見据えたいま、社員に対して、パンデミック前のようにオフィスへ毎日出社することを求める会社もでてきています。
このような経営者たちは、社員がオフィスで互いに顔の見える距離感で仕事をするのが最も効率的で生産性が高い働き方だと考えていて、特に「イノベーション」・「コラボレーション」という意味では、テレワークは成果が出にくいだろうと言い、完全出社へ舵を切る傾向にあります。
では、果たして本当にテレワークは、出社勤務よりも生産性が低いのでしょうか?
この疑問に答えるべく、本記事では最近発表されたアメリカのマイクロソフトの報告と、ハーバード・ビジネス・スクールが行ったフィールド実験の報告書の2つをご紹介します。
マイクロソフトが発表したレポート
アメリカのマイクロソフトが世界11か国20,000人に対して取ったアンケート、1兆件以上にのぼるMicrosoft365のデータの分析をもとに最近発表したレポートによると、ハイブリッドワークでは仕事の量・時間ともに増えていることが見て取れます。
さらに興味深いことに、社員は「上司や会社が、テレワークをしているときの生産性を疑っているので、きちんと働いていることを証明しなければならない」と感じていて、上司や同僚に見せるためだけに、必要性がないと分かっている会議に参加したり、メールの返信をする時間を意図的に選んだりしています。
この行動は「productivity theater(生産性劇場)」と言われ、テレワークをしている日に、平均1時間を「真面目に働いていることを証明する」ために使っていると言われています。
ハーバード・ビジネス・スクールが行ったフィールド実験
次に、ハーバード・ビジネス・スクールの研究者とスタンフォード大学・コロンビア大学の研究者が共同で発表したワーキングペーパー「Is Hybrid Work the Best of Both Worlds? Evidence from a Field Experiment」をご紹介します。
結論を先に言うと、このワーキングペーパーは、ハイブリッドワークが、完全出社のオフィスワークと同程度に生産性が高く、フルリモート勤務よりも生産性が高いことを示した世界で最初の簡易な調査結果です。
調査のためのフィールド実験は、2020年の夏に9週間に渡り、世界最大のNGOであるバングラデッシュBRACにて、ダッカにある本部で管理業務を行っている社員130人を対象に行われました。
実験の運営側が、対象者がオフィスで働く日を無作為に設定して、実際にその通りに勤務してもらい、期間中に対象者がやり取りした全てのEメール情報が取得・分析されました。具体的には、送受信したメールの通数・やり取りした人数・文面の長さに加えて、機械学習の手法も利用してメールの内容や添付物に至るまでが分析されました。
調査の結果、出社日数が週の半分程度(ハイブリッドワーク)の社員が、より多くの仕事をこなしていることがわかります。
また、実験の最後に対象者に対して行ったアンケートによると、出社とテレワークが半分程度ずつのハイブリッドワークをした人たちは、フルリモート勤務者および出社が多かった勤務者に比べて、テレワークの満足度、ワークライフバランスの満足度ともに高く、孤独感は低かったと答えています。
実験の結果から読み取れること
仕事の生産性は、タスクを完遂するのにかかった時間で測ったり、成果物が与えるインパクトで測ったりと、仕事の種類によって尺度が変わり、定義そのものも異なるため、Eメールのみを分析した結果はあくまで仕事の一側面を分析した結果と言わざるを得ないでしょう。
しかしながら、ハイブリッドワークは、完全出社の社員および完全リモートワークの社員よりも、メールベースでの業務で高い生産性をあげていることが分かりました。ここから、業務全般でも同様の傾向が見られるかもしれないという仮説を立てることはできます。
また、ハイブリッドワークの社員は、テレワークの「フレキシビリティ」を享受しながら、フルリモートで働く人が感じる程の「孤独感」は感じていないこと、つまり「フレキシビリティ」と「つながり」の両方の良いとこどりをしている様子が見てとれます。
仕事の進め方といつどこで働くかについての「フレキシビリティ」は、斬新な成果を上げる上でプラスに働くのに対し、「隔離」は、仕事のパフォーマンスに悪影響を与えます。
テレワークは、通勤と仕事の妨げになる事柄を排除し社員にフレキシビリティを与える一方で、同僚との距離が離れることで、孤独感を感じやすい「隔離」につながるとよく言われますが、ハイブリッドワークは、この二つのバランスが取れた働き方と言えるでしょう。
まとめ
経営者がテレワークを止めて社員を週5日オフィスに戻したいと考えている一方で、多くの社員は、パンデミック終息後もテレワークを続けたいと願っています。スタンフォード大学の Nicholas Bloom教授らのまとめたレポートによると、テレワークは離職率を35%削減させ、社員の自己申告による仕事の満足度についてのスコアを上昇させる要因となっています。社員がテレワークにどれだけ価値を置いているかが分かります。
ハイブリッドワークの生産性は、完全出社のオフィス勤務と同等程度であることが見えてきたいま、みなさんの企業は、アフターコロナの働き方をどうされますか?
最後に、今回引用したレポートのひとつを発表したマイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏の言葉をご紹介します。
出典
https://www.inc.com/jessica-stillman/productivity-asynchronous-remote-work.html
https://www.hbs.edu/ris/Publication%2520Files/22-063_639195cc-e7b5-47d3-9281-62d192c5b916.pdf