世界のテレワーク事情~2023年 最新データを読み解く~
この記事では、在宅勤務についての研究を行っているWFH Researchが2023年6月に発表した最新の調査結果「Working from Home Around the Globe: 2023 Report(世界の在宅勤務 2023年報告)」をご紹介しながら、アフターコロナの世界のテレワーク事情を見ていきます。
2023年、アフターコロナの働き方
直近の働き方を世界レベルで見ていくと、テレワークを行っている人の割合は、「フルリモート」と「ハイブリッド勤務(テレワークと出社勤務を組み合わせた働き方)」を合わせてもアンケート回答者全体の33.5%に止まり、「完全出社勤務」をしている労働者が多くなっていることが分かります。
次に、過去に在宅勤務を経験したことがある人に限定して、現在の働き方を見てみます。
在宅勤務なしの「完全出社勤務」が全体の半数近く(45.7%)と突出しています。週1日~4日の在宅勤務をすべて合わせた「ハイブリッド勤務」が41.10%で、多くの労働者がハイブリッド勤務をしているのが現状のようです。
この傾向は、アフターコロナに移行する中で、テレワーク時のコミュニケーションや人事評価の難しさなどの理由から、フルリモート勤務をやめて、社員を出社勤務に戻すオフィス回帰を実施する企業が増えてきている動きとも整合しています。
過去に在宅勤務を経験した労働者たちは、このような現状に満足しているのでしょうか?アフターコロナの働き方として、彼らが希望している在宅勤務日数を調査した結果が下のグラフです。
実態とは真逆で、週5日の「フルリモート勤務」を希望している人が全体の4分の1(25.7%)と、比較的高い結果となっています。また週1日~4日の在宅勤務をすべて合わせた「ハイブリッド勤務」は55.6%と非常に高く、多くの労働者が、アフターコロナの働き方として、テレワークを望んでいることが分かります。
【国別】テレワークの実施状況
では、次にテレワークの実施状況を国別に見てみるとどうでしょうか?
「終日フルタイムの在宅勤務が、週に何日行われたか」を調べるための質問で、世界平均は0.9日/週でした。最も在宅勤務日数が多かったのはカナダの1.7日/週で、イギリス1.5日/週、アメリカ1.4日/週が続きます。
一方、最も在宅勤務日数が少なかったのは韓国の0.4日/週で、日本とギリシャの0.5日/週が続きます。
上の図を見て明らかなように、世界レベルで見ていくと、英語圏の国々の労働者は、他の言語圏と比較して在宅勤務の日数が多いことが分かります。
このデータからは、国の経済的な豊かさではなく、言語が、在宅勤務日数の差を生んでいると読み取ることができます。アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった英語圏諸国の在宅勤務日数のスコアは、平均を上回っています。また 5か国すべてにおいて、日本、フランスなどの経済的に恵まれた非英語圏の国よりも高いスコアを示しています。
この結果について、WFH Researchの設立者であり、スタンフォード大学の教授でテレワーク研究の第一人者であるニコラス・ブルーム氏は「予測していたものではなく驚きだ」と話していますが、一般にアメリカ企業は、従業員のパフォーマンスの測定や評価において優れているため、在宅勤務について他国よりも寛容になっている可能性があること。また、アメリカの優れたマネジメント手法は、特に他の英語圏において受け入れられやすいため、英語圏では在宅勤務がより寛容に認められているのかもしれないと説明しています。
【国別】労働者の希望する在宅勤務日数
労働者の希望する在宅勤務日数を国別に見てみます。
すべての国において、労働者の希望する在宅勤務日数が、先ほど見ていただいた実際の「在宅勤務日数」よりもおおよそ1ポイント程度上回っています。差が見やすくなるように、比較したグラフがありますので下の図を見てみましょう。
特にその差が大きい国はトルコ(1.90ポイント)で、アルゼンチン(1.80ポイント)、南アフリカ(1.70ポイント)が続きます。
一方、労働者の希望する在宅勤務日数と実際の在宅勤務日数の差が最も少ない国は、デンマークとオランダでそれぞれその差は0.50ポイントでした。
【国別】企業が労働者に認めている平均的な在宅勤務日数
「労働者が希望する在宅勤務日数」と「実際の在宅勤務日数」に差が出ていることを見ていただきましたが、これは企業が労働者に認めている平均的な在宅勤務日数に起因するのかを見たいと思います。
国別に見ると、企業が労働者に認めている平均的な在宅勤務日数には、在宅勤務の実態とおおよそ同様の傾向が見られます。
最も日数が多いのはアメリカで1.9日/週。カナダ(1.8日/週)、イギリス(1.7日/週)が続きます。最も日数が少ないのは台湾で0.5日/週。韓国(0.6日/週)、フランス、デンマーク、ギリシャ、ノルウェー、ポルトガルのヨーロッパ諸国(0.7日/週)が続きます。
「実際の在宅勤務日数」と「企業が労働者に認める在宅勤務日数」の差を下の比較グラフの図で見てみると、ほとんどの国において「企業が労働者に認める在宅勤務日数」の方が多いのが分かります。例外は台湾、ポルトガル、フィンランドの3か国のみです。
この結果から、企業が労働者に対して認めている在宅勤務日数に対して、実際には労働者はより少ない日数を在宅勤務にあてている様子が見て取れます。この選択には何か際立った要因があるのでしょうか?
最後に、労働者が「テレワーク」と「出社勤務」ついて、それぞれどのようなメリットを感じているのかを見ていきます。
労働者が感じている「在宅勤務」と「出社」、それぞれのメリット
労働者が、在宅勤務に感じているメリットの第一位は、通勤がないこと(59.65%)。次いで、ガソリンとランチ代の削減(43.84%)、働く時間の柔軟さ(41.93%)が続きます。
テレワークでは、時間を効率的に使えることと、経済的なメリットがポイントになっていることが分かります。
一方で、オフィスで働くことのメリットとしては、同僚との交流(62.04%)がトップで、対面でのコラボレーション(54.4%)、オンとオフの明確な線引き(42.74%)が続きます。
オフィス勤務は、対話を要する種類の仕事やメンターリングに向いているのに対し、在宅勤務は事務作業や集中して取り組む仕事に向いていると言われますが、労働者がオフィス勤務に対して感じているメリットにもこれが反映されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
日本では、コロナウイルスが感染症5類に移行してから、テレワークを廃止した企業もあるようですが、世界的に見てもオフィス回帰の動きの中で、フルリモート勤務の人が少なくなり、週に数日だけ在宅勤務で働くハイブリッドワークへ移行しているようです。
労働者は、平均週に2日程度の在宅勤務を希望しているという結果がありますので、離職防止、従業員満足度の向上、採用競争力の強化といった観点から、ベストなハイブリッドワークのあり方が引き続き企業にとっての関心事になっていくと思われます。
イマクリエでは、今後も引き続き、最新のテレワークに関する海外情報を発信していきます。どうぞご期待ください。